未来のアグリ株式会社(旧北原電牧株式会社)    

――有害鳥獣対策とは?――
  基礎編――二つの手法 
    電気柵
    物理柵
  実践編――動物別戦略
    イノシシ
    シカ
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  有効利用――おいしく食べる
  各種捕獲罠
  耕作放棄地放牧のススメ 
=現場の専門スタッフから=
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Introduction:電気さく?電気柵?

 現在、野生動物防除・放牧に使われている、いわゆる電気柵には、電気牧柵・電牧・電柵・パワーフェンスなど、様々な呼び名が存在します。電気柵は当初、電気「牧柵」として、牛の放牧などで使われ始めました。この名残で、未だに「牧柵」以外の場面で使用する場合でも電気牧柵、電牧と呼ばれることも多いようです。
 一方、獣害の広がりとともに、「電牧」に無縁だった人たちの間にも電気柵の使用が広がるにつれ、単に「電気柵」と呼ばれることも多くなりました。金網や、樹脂ネットに電気を流す場合に「電牧」という言葉を使うのはやや的外れな感じがしますので、獣害対策の場面においては後者の方がふさわしいように思われます。もっとも獣害対策の場面においても「電牧」は簡易な電気柵を表す言葉として定着していますから、電気柵は電牧を含む上位概念と考えてもよいかと思います。

 さらに「電気さく」と、あえて平仮名まじりで書かれることもあります。実はこの表記は、法律に由来するものです。法律上は、電気柵の使用は、主に農作物を野生動物から守るなどの限られた場面においてのみ許されます。そして、そこで使われることが許される電気柵のスペックにも、安全性を担保する厳格な基準が設けられており、これらをクリアして使用することができる電気柵について、法律では「電気さく」という表現が使われているのです。
 とすれば、本来であれば、HPにおいても法律に倣った「電気さく」を用いるべきとも言えましょう。しかし、経験上「電気さく」と表記すると、文章が大変読みにくくなりますし、実践では、例えば環境省の『クマ類出没対策マニュアル』でも「電気柵」の表記が採用されていることなどから、このHPにおいては「電気柵」という表記方法をとることにしました。



◆基本の「き」
 電気柵は獣害防除、または放牧等で広く使用されていますが、まず簡単にその仕組みを見てみましょう。電気柵は、100Vやバッテリーを電源とする電牧器が発生させるパルス電流を電牧線に流し、これに触れた動物にショックを与えて、田畑などへの侵入を防ぐものです。電圧は数1000Vにも達しますが、法律で定められた「電気柵」を使用する限り、危険なものではありません。
 コラム・『電気柵の安全性‥淡路島の事故はなぜ起こったか』




 図のように、電牧器のプラス端子は電牧線に接続されており、発生したパルス電流は電牧線に伝わります。一方マイナス端子はしっかりとアースします。(十分なアースは電気柵を効果的に使う最重要ポイントです) そして、電牧線と地面(アース)が伝導体でつながると、この伝導体をスイッチとして「電牧器⇒電牧線⇒伝導体⇒地面⇒アース⇒電牧器」という回路がつながりますが、この時に伝導体が動物であれば、動物は強いショックを受け、以後電気柵に近寄らなくなるわけです。
 伝導体が草などであれば、これが電気柵で言う「漏電」という状況になり、漏電が大きければ多いほど(草がつけば付くほど)電牧線と地面の電位差が小さくなり、電気柵の効果は薄れてしまいます。漏電は電気柵最大の敵ですから、システム自体に漏電の原因を作らないことが重要です。そのためには、電牧線を支えるポールに絶縁性の高い物を使うか、碍子(ガイシ)を使って電牧線を流れる電流がポールに伝わらないようにしなければなりません。時々、木柱に直に電牧線を巻きつけているのを見かけますが、ごく特殊な木材を除いて漏電の原因になります。


◆電気柵の効果
 「電気柵は心理柵」と言われることがあります。これは、電気柵は物理的には動物が超えることができる物であっても一度電気ショックを経験した動物にとっては「近寄りたくない」という心理的バリアを生じさせて侵入を防ぐことに本質があることを意味するものです。心理柵のメリットは必ずしも物理的に侵入を許さない構造でなくてもよい、端的にいえば物理柵に比べ資材費を大幅に軽減できることにあります。ただその代償として、心理的効果を持続させるための保守管理が要求されるのです。
 また電気柵を使用するに当たり絶対に知っておいていただきたいのは、防除効果は100%とはいえない、ということです。心理的な効果は絶対的ではありませんし、物理的機能が弱いだけにハプニング的な侵入もあり得ます。また管理が悪く心理的効果を発揮できないことも考えられます。
 とは言え、正しく設置された適切な電気柵を適正に管理して使用すれば、そう簡単に動物の侵入を許すものではありません。物理的なフェンスよりもかなり安価な資材で、100パーセントに近い効果を上げることは十分に可能なのです。要はコストパフォーマンスの面で非常に優れた獣害対策と言えます。とすると、「正しく設置された適切な電気柵とは何か?」「適正な管理とは?」が問題になってきます。


◆適切な電気柵・正しい設置
 チェックポイントは沢山ありますが、概ね以下の条件を満たしていればよいでしょう。
@距離にあった電牧器を使用すること。
 それぞれの電牧器に対する適正な距離はメーカーの言うことを鵜呑みにできません。目立った漏電のない状態で少なくとも4000V以上の電圧が計測される必要があります。

A対象動物に合った設計であること
 左メニュー「実践編」でまとめた、それぞれの野生動物に対する指針と事例をご参照ください。

B地形に合った設置をすること
 動物に合った高さや段数で設計しても、地面の凹凸によって大きな顧問ができたり、電気柵の外側が高く、相対的に電気柵が低くなってしまっては動物に対して隙を見せることになります。地なりに高さを修正したり、部分的に柵の高さを増やすべき場合もあります。

Cアースが十分なこと
 厳密にいえば接地抵抗を測るべきなのでしょうが、メーカーが電牧器毎に用意しているアースを、説明書に従って設置すればほとんど問題ないと思われます。3本打っべきところを1本にしたり、指定の打込み長さを無視して30cm程度打込んだだけだったり…・とアースを甘く見ている人は意外に多いようですが、アースは電気柵で大変重要な意味を持ちますので、しっかりと設置してください。

D絶縁すべきところはしっかりと絶縁すること
 設置後の漏電管理が重要なのは当然ですが、システム自体に漏電の原因があるのでは論外です。


◆適正な管理
 適正な管理とは、簡単にいえば前項の@〜Dなど適切な電気柵の正しい設置を維持することです。その中心はなんといっても漏電管理です。機械の能力によって漏電時の電圧の下がり方は大きく異なりますので、どの程度の草までは許されるかは一概に言えません。理想を言えば、定期的に電圧をチェックして、4000Vに近づいたら草刈りをすべきです。
 草の伸びる速度は季節によって、また植物の種類によって異なります。昨日は漏電していなかったのに、今日は電圧が大幅に下がった等ということもあり得ますので、毎日の日課にしてしまったほうが良いかもしれません。(彼岸花などはあっという間に伸び、水分たっぷりなので要注意です)
 一定電圧以下になると警告してくれる資材や漏電場所の方向を示してくれるテスターなど、便利な製品もいろいろありますので、これらを利用すれば、多少なりとも労力を軽減できるでしょう。


◆余裕ある電牧器
 上記のように、草刈りを日課にできればいいのですが、通常は、広大な農地の林縁の草刈りをすることは困難でしょう。その場合、十分以上に余裕のある電牧器を採用することで、漏電による電圧降下を防げます。一つは、電牧器自体が十分な電流を供給できるように設計されていること。そしてもう一つは、触れた草をどんどん枯らしてしまう点。枯れた草でも雨が降れば漏電は起こりますが、通常、水分を失った枯れ草なら漏電を最小限にできます。
 また、漏電が起こった同じ3000Vの電気柵でも、余裕のある大型の電牧器では、はるかに強烈に触れた動物に衝撃を与える事ができます。是非、2ランク上の電牧器を選択することを推奨します。

電牧器の実用距離について
 各メーカーのパンフレット等を見ると、電牧器の推奨距離などが記載されていることが多いようです。弊社の電気柵カタログを見ても、例えばビビット1000という機種について、実用距離2kmとの記載があります。しかし、獣害対策に特化した「防ぐか、獲るか VOL.2」のコラムにおいて、「1ジュールあたり1km」という記載があり、この記載からすると最大出力が1ジュールであるビビット1000の実用距離は1kmということになります。
 これらの記載は矛盾するのでしょうか?―――
 実はそのコラムをよく読んでみるとわかるのですが、電牧器の実用距離というのは、一定の条件を想定しないと出せるものではありません。条件とは、例えばワイヤーの種類、段数などの客観的な条件のほか、想定する漏電量、またどの程度の電圧がでていれば「よし」とするのかといった主観的なものも含まれます。ビビット1000が2km以上の距離でも十分機能する場合もあります(実際に多数の方が2km以上で使用され、効果をあげています)が、管理が悪い場合のことを考えると1km程度まででお薦めするという場合もあるのです。
 上の二つの記載は矛盾するものではありませんが、想定する条件をはっきり記載しなかった点で誤解を与える可能性がありますので、この場を借りてお詫びいたします。

 以上からわかる通り、実用距離はスタンスによってかなりの幅を持たせることができます。各メーカーのカタログでは、其々想定している条件があるはずであり、その条件が明らかでない以上カタログ上の実用距離の比較は意味がありません。時折、物品購入の事業などでも「○○km用の電牧器」という指定があるのですが、このような記載は、厳しい条件を想定して実用距離を出している業者にとっては歯がゆいものです。先に述べたとおり実用距離は主観が多分に入るものなのですから、スペックを指定したことにはなりません。スペックの指定は、最大出力(ジュール)や、一定の漏電時の電圧(例えば500Ωの漏電で5000V)などの客観的数値で行うべきではないでしょうか。  



電気柵2種

 意外に知られていませんが、電気さくにはその設置方法によって大きく2つのタイプがあります。それぞれに持ち味があります。よく特徴をつかんでお選びください。

Aタイプ:固定型 (ex.猪ポール+猪ポール碍子/KD支柱+KD碍子)
 電牧線(主にポリワイヤー)を杭毎に、碍子に固定していくタイプ。北海道を除くと、主流はこのタイプです。


 ワイヤーの緊張は杭間ごとに碍子に固定することで行うので、角杭に過度な負担が掛ることもなく、直線上でもコーナーでも同じ種類の杭で済みます。⇒距離と段数から資材数を簡単に積算できます。万一1カ所ワイヤーが切断しても、漏電はその部分だけにとどまります。
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 ワイヤーを杭毎に碍子に固定するため強い緊張はかけられず、杭間隔は狭くなり、施工・撤収時の作業量が多くなります。ワイヤーが短距離で固定されていますので、動物の接触があった時の「遊び」が少ないため、ハプニング的な侵入の時にBタイプよりも破損、倒壊の可能性は高くなります。



Bタイプ
:柔軟型
 (ex.グラスポール+Gクリップ+絶縁ポール など)
 電牧線を端末間で緊張し、途中の杭では高さを保つだけ、というタイプ。グラスポールにワイヤーを固定しないクリップを使用するのが一般的です。(右写真参照)北海道以外では少数派でも、距離が長ければ断然お薦めはこちらです。


 ワイヤーは碍子に巻きつける必要がなく、端末柱ごとにワイヤーを引っ張って緊張します。⇒ワイヤーにはテンションが掛っているので、杭間隔を長くすることができます。(鹿柵なら10m以上も可能) クリップの穴にワイヤーを通すわけではなく、あらかじめ杭の周りに準備したワイヤーを外側からクリップにはめ込むことができるので、施工・撤収は大変容易で、時間もかかりません。動物の衝突を端末間全体で受け止めますので、柔軟なグラスポールとも相まって容易に破損・倒壊しにくい構造といえます。
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 ワイヤーを強めに緊張しますので、端末やコーナTには力が掛り、中間杭よりも多少径の太い杭を用意しなければなりません。ワイヤーが切断すれば、全体が弛んでしまいます(但し修復も容易)。当社の典型例では中間をφ10oやφ14oのグラスポール、コーナー・端末は杯38oの絶縁ポールを使用しています。
⇒資材数の正確な積算には、コーナーの数やコーナー間の距離が必要になります。
 

★Bタイプのコンセプトをさらに推し進めたのが、高張力線を緊張して張る、恒久的な電気柵(以下Cタイプ)です。これは、コーナーや角杭には更に頑丈な木柱や鋼管杭を使用し、特に力が掛る杭には控え柱で更に補強し、高張力線を強く緊張して張るものです。Cタイプのメリット・デメリットはBタイプとほとんど同じですが、最大の「売り」は、ある程度物理柵的な機能を有する点でしょう。動物が電気柵に触れてビックリして突進するような場合に、巻に柵であるBタイプであれば、Aタイプに比して柵が壊されにくいというメリットがあるにすぎませんが、Cタイプでは突進を一旦しっかり受け止めますので、その間に更にパルス電流が流れて動物が退散させることができるのです。
 このような機能をもつCタイプは、北海道では、広大な公共牧場の外柵にも広く使用されており、信頼性は十二分と言えます。Cタイプは獣害対策専用としてはかなり珍しい部類に入りますが、耕作放棄地放牧などではよく利用されています。

 Cタイプの電気柵では、ワイヤーを緊張して張るため、直線上の中間の杭はワイヤー間隔を保持するという機能に徹したものになります。したがって高張力線というゴツいワイヤーを使用するにもかかわらず、中間杭は貧弱とも思えるφ10mmのグラスポールでも十分に機能します。施工性が大変良いことからステップ付きの物を使用することが多いです。更に杭の打ち込みを全くしない、宙ぶらり状態の杭(バトン)を利用する場合もあります。後者ではコーナー杭はφ15cm以上の木柱を使用することになりますので、柵の移動を予定していない場合に利用されます。耕作放棄地放牧のページをご参照ください
 
Information電気柵の安全性…淡路島の事故はなぜ起こったか?
 平成21年に淡路島で、電気柵に感電した男性が死亡する、という痛ましい事故がありました。これは一部で「電気柵による死亡事故」とショッキングな見出しで報道されましたのでご記憶の方も多いでしょう。しかし、この事故をよくよく検証してみると、電牧器を使わないで100V電源から直接ワイヤーに電気を流すというよっておこったものだとわかりました。上述したとおり、いわゆる「電気柵」には、安全性を加味した厳格な規定があります。それは、かなり専門的な範囲であり、特に必須の電牧器は一般に自作できるようなものではありません。つまり、淡路の事故は、単に素人判断で電気を流した柵によって起こった事故であり、電気柵の概念の普及の遅れがまねいた悲劇だったのです。
 この悲劇の背景には1おそらく「1万ボルトの電気さくが安全なのだから100Vは危険でない」という誤解があったと思われます。先述した電気柵の厳しい基準では、バッテリーを電源とする電牧器か、本体またはアダプターにPSEマークのある電牧器を使用しなければならず、後者の場合には漏電遮断機の設置も義務付けられています。(この場合の「漏電」は一般的な用語の漏電であり、電気さくに草などが触れた場合の漏電とは異なります)
 そして電牧器は微量な電流を高圧で、パルス電流として流すものですから、100V直結の電気柵とは全く異なるものです。これは、時速100キロのピンポン球が身体に当たったのと、時速20キロのトラックにはねられた違いに相当します。
法律の詳しい内容には触れませんが、以下の3点は必ず守ってください。
   1.信頼できるメーカーの電牧器の使用
   2.100V電源の場合は、漏電遮断機の使用
   3.危険表示板の設置

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