未来のアグリ株式会社(旧北原電牧株式会社)    
Defence for Bears実例集 クマ




クマ用電気柵の基本形と重要な最下段

 クマに対して効果的な電気柵の設置方法は、リボンテープ、ポリワイヤーともに、高さ20-40-60p(一重三段)に張るということでしょう。特に「掘り返し」が得意なクマには最下段の高さが重要で、起伏のある地形に張る際は、その起伏に合わせてポールを加え最下段と地面の隙間を20p以下に維持しなければなりません。クマは、電気柵の周りを歩き、最下段が地面から離れている箇所を見つけると、そこから侵入する傾向が強く、逆に、最下段20pを守っていれば、二〜三段目を30p間隔で張っても、機能する場合がほとんどです。
クマ用電気柵 クマ用電気柵2


初手にガツンと学習させる
クマ用電気柵3 高知能なクマに対しては、はじめて電気柵に触れる際に、いかに強烈な電気ショックを与えるかが特に重要です。電圧は、できるだけ余裕のある電牧器で7000V以上発生させておくのが理想的です。
 電気柵を一見同じように導入した場合でも、地域によって、「掘り返し」がまったく起きない地域と、あちこちで頻発するようになってしまう地域があります。後者の地域では、単に電気柵の効きめが悪いというより、設置方法・電圧の低下によって、電気柵でわざわざ悪い学習をクマにさせてしまっていることになります。電気柵を導入する際に大切なことは、その地域で防がなければならない野生動物の性質・習性、そして電気柵が「心理柵」といわれるゆえんを十分理解し、もれなく電気柵に対して忌避心理を抱かせることです。もし、既に「掘り返し」が見られはじめている地域では、もう一度クマの習性と電気柵の原理を理解しなおし、早い段階で改善することを強く推奨します。
 


既に悪い学習をさせてしまっていたら?

 述べてきたように、クマに不適な電気柵で一度掘り返しを学習したクマは、「電気柵→掘り返し」という経験則を持ってしまっていますから、通常のクマ用電気柵では効果がなくなっていることもあります。その場合、通常のクマ用電気柵に加え、さらにストレスをかけて「掘り返し」を行う気にさせないことが必要となります。一つは、バッファゾーンを効果的につくって、電気柵・農地に接近すること自体にストレスをかける方法。もう一つは、既存のクマ用電気柵の外側30〜40p程度にトリップフェンスを加え、掘り返しそのものにストレスを加える方法。
 十分なバッファゾーン確保が難しいようなら、作付けで工夫する方法もあります。基本的に、クマが好まず、背丈の低い作物を、クマの侵入が予想される山側に植えるものですが、酪農であれば、牧草地を山側に、デントコーンを道側に植え、牧草地をバッファゾーンとするのが効果的です。
 例えば、下の模式図で「図1」と「図4」で、どちらが管理しやすい農地であるかは一目瞭然ですが、トラクターの切り返しを考えても、「図2」より「図3」のほうが管理しやすい農地配置と言えるでしょう。

      山間部環境に適した農地の整備


格子フェンスへの「よじ登り」対策
格子フェンスへの「よじ登り」対策 シカ対策で物理柵を張ったにもかかわらずクマの「よじ登り」が起きている場合、あるいはそれが予測できる場合には、右のように物理柵に補助的な電気ワイヤーを張ることで防止できます。この方法は、物理柵単体に対して、設置労力・経費ともに軽いため、クマの被害が想定される場合にも有効です。
 また、「掘り返し」が起きる場合には、やはり高さ20pのトリップフェンスを追加します。








  
シカとクマのダブル防除
 シカとクマを両方防除する必要のあるケースも少なくありません。シカによる被害が甚大なため、先ずシカをと考えがちですが、将来クマの被害も防ぐのであれば、同時に防除を進める必要があります。シカ用電気柵の最下段は30p内外。クマ用は20p以下ですが、シカ用電気柵で一時的にクマが止まることはあっても、継続的に防ぐことは期待できません。まずクマは「掘り返し」をおこなってくるでしょう。ところが、いったん「掘り返し」を学習したクマは、クマ用の電気柵に対してもその方法で侵入を試みるようになります。クマの生息年数20〜30年ということを考えても、それは得策ではありません。

フェンス設置の時期は?
 クマによる被害の傾向は、収穫前に集中するということです。シカのように新芽の時期から巧妙に多頭数で被害を与えることはありません。この点、クマの防除は、やる気にさえなればシカに比べて結果を出しやすいといえるでしょう。例えばデントコーンでは、ある時期にコーンの実の成りを様子見にきて、甘み・栄養価が最大となる黄熟期あたりから、近隣に居付いて食べあさるようになります。したがって、様子見の時期を把握し、その手前で電気柵のメンテナンスを完全にすることが重要です。また、電気柵を導入する際も、被害が起きる時期になってから設置作業に入ると、農地の中にクマを閉じ込めてしまうことも度々あり、注意が必要です。もし、閉じ込めてしまった場合、クマは何とかそこから出ようとしますが、出る方法を発見してしまうと、入る方法を学習した事になり後々被害解消が困難になりますから、いったん一部ワイヤーを降ろすなどして、クマを外に出すことが必要です。

クマシフト
 先述のように、シカとクマの防除でクマを後まわしにするとクマの防除が継続的に困難になる場合がありますが、もし現在シカ用電気柵を導入し、クマの被害が想定される場合には、「クマシフト」という一時的の方策があります。このシフト時期は日本各地で様々でしょうが、クマが様子見に来る直前を境に、電気柵の防除対象動物をシカからクマに変更する方法です。春先からシカ用電気柵の学習をしてきたシカは、この時期には既に「電気柵→あきらめる」という学習をしているはずです。クマの降農地を前に完璧にメンテナンスを行いつつ、30-50-90pのシカ用電気柵を、クマ対応の20-40-60pに下げてやるのです。これは、グラスポールとクリップであれば、さほど労力の要る作業ではありません。
 ただ、永続的にクマの被害を防ぐのであれば、初手からクマとシカのダブル防除を考えシステムを構築したほうがはるかに有利でしょう。


電気柵の段数・間隔 電気柵の段数・間隔などは柔軟に変えられるため、実際は無数にヴァリエーションがありますが、シカとクマの基本的なフェンスを左に示しました。
 クマシフトとは、C→A、もしくはD→Eのような高さ変更をいいます。
 ただ、シカ用では鷹揚だった最下段は、しっかり20p以下をキープしなければなりません。

  


ベアドッグの進路は三通り?

 クマの追い払いに使われるベアドッグは、カレリアンベアハウンド、アイヌ犬など従来クマ猟に用いられていた狩猟犬の流用が現在のところ主流です。クマに対する能力が高ければ高いほど、その性質は一般的な家庭犬から外れ、扱いづらいものとなる傾向があります。そこで、猟犬系のカレリアンは、生まれてからしばらく観察され、三つのグループに分けられます。一つは、高度な訓練を施し積極的にクマを追い払うベアドッグのグループ。そして次に、センサー・警報機として働き、クマに警戒心を与え得る従来の番犬的なグループ。最後にクマに対して特に作業を要求されない家庭犬グループ。それぞれ、気質によって分類されます。この分類は、優劣ではなく適材適所です。
 概してα気質の強いベアドッグは、ハンドラーと十分密な信頼関係を結ぶことが必要で、片手間に育成できるものではありませんが、それに準ずる気質を持つ番犬グループは、従来の狩猟犬・番犬の育成方法で概ねクマ対策の実用に耐えます。一般的に普及可能なのも番犬タイプ。バッファゾーンに並び、クマに降里ストレスを与えうるものです。
 高知能なサル・クマに対しては、心理的にストレスをかけることで行動パターンを変化させることが、より可能です。例えば、ベアドッグを飼育するだけで近辺にクマやキツネは近寄らなくなることがほとんどですが、シカは図太く近寄ります。心理的ストレスを様々な方向から様々な手法でかけてやることで、クマ・サルの接近自体を制御することができます。その要となるのが電気柵と言えるでしょう。  


ストレスは相対的
 ストレスと誘因度というのは、あくまで相対的なものです。
 写真は、クマの生息地を背負った小さな農地で、作物はスイートコーンなどクマの好物にも関わらず、様々な手法でクマの接近・侵入を防いで来ました。右側にバッファゾーンとなる草地があり、奥に見える林は下草が刈られ枝打ちもされて、見通しがよくなっています。フェンスは針金・有刺鉄線などを順次加えたようですが、その総額は恐らく電気柵の数倍に達しているでしょう。
 この農地の近隣にはバッファゾーンを挟んでデントコーン農地がありますが、例年クマの被害はデントコーンに集中し、はるかに誘引力の高いはずのここのスイートコーンは被害を受けずに来ました。しかし、デントコーンにシカ用の電気柵が張られた年、あっけなくここの防除はひと組の親子グマに破られスイートコーンはほぼ全滅したのです。知恵と工夫で守られてきたこの農地も、いよいよ電気柵導入を考える必要が出てきました。




触れた電気柵への忌避心理の実証
 メンテナンスがしっかり施された電気柵に触れたクマが、いかにもう一度電気柵に近づくのを嫌がるか。そのストレスの大きさがわかるケースが、幾つかのパタンで起こる「クマが電気柵に閉じ込められる状況」です。 
 写真は、陽の高い時間に誤って刈り取り後の農地に入ってしまった若グマですが、入るときにシカ用の電気柵に首筋で触れました。そしてこのあと、50分間にわたり轟音玉(手投げ花火)などの追い払いを受けたにもかかわらず、右往左往するだけで決して電気柵を越えて外へ出ようとはせず、結局待機していたハンターに射殺されました。
 また、先述した電気柵を設置する際に閉じ込められたあるクマは、一週間もの間、外に出られずデントコーン農地の中を歩き回りました。
 通常、電気柵に触れたクマが、その後どのような行動パタンをとるかは、GPS発信器をつけて追跡しなければなかなかわかりませんが、これらの事例のように、外に出られないストレスの中でも、電気柵への忌避心理は十分発揮されるとわかります。


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